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就業規則作成・変更Q&A

不景気による経営危機を乗り切るために賃金カットを行うには?

Q: この不景気によって業績が悪化し、人件費コストの削減が避けられない状況になってしまいました。賃金カットについて、役員と大半の従業員には同意してもらえましたが、一部の従業員には異議を唱えられ同意してもらえません。同意を得られない従業員にも賃金カットを実施したいのですが、どのように対応すれば良いでしょうか?ちなみに、当社に労働組合はありません。
A: まず、役員についてですが、(会社との関係は原則として労働契約ではなく、委任契約によるものであるため)個々の役員が同意をすれば、契約内容を変更することは何ら問題ありません。次に、従業員についてですが、(会社との関係は原則として「労働契約」であるため)通常、こちらは個々の同意だけで賃金カットを行うことはできません。就業規則の賃金規程を変更する必要があります。

「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」(労基法93条)

つまり、仮に個々の従業員が賃金カットに同意(労働契約)したとしても、就業規則を変更しない限り、賃金カットは無効である、ということが読み取れます。

当然、賃金カットということになれば、就業規則の不利益変更(「就業規則の不利益変更」とは?参照)の問題が出てきます。しかし、結論を言ってしまえば、賃金カットであっても、社会通念に反するものではなく、合理的であり、適正な手続きによって行われた場合には、有効となり得ると考えられます。

また、同意を得られない従業員についてですが、前述しましたように就業規則の不利益変更(ここでは賃金カット)が有効と判断されれば、同意を得られない従業員に対しても、賃金カットを実施することができます。

法律論では、この通りです。ご質問のこの状況においては従業員から納得を得る事はまず難しいでしょう。そうは言ってもやはり、従業員に対しては十分な説明義務を果たし、会社として誠意を明確に示していく必要があるでしょう。

法令または労働契約に抵触する就業規則の有効性は?

Q: 労働契約や法令に抵触する就業規則を有効とする(労働者との)合意は認められますか?
A: 認められません。

就業規則、労働協約、労働契約や特約等のいかなる方法をもってしても、法令または労働協約に抵触する就業規則を有効とする合意は無効と解されます。

  • 「就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、…適用しない。」(労働契約法13条)
  • 「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」(労基法92条1項)

就業規則等に定めのない"残業代込みの手当"の有効性は?

Q: 賃金規程には定めていませんが、営業手当の中に残業代を含めて支給しています。しかし、従業員から残業代が支払われていないとして、過去2年分の残業代の支払を請求されてしまいました。支払わなければならないのでしょうか?
A: 規程に定めがなければ、残業に対する割増賃金全額を支払わなければなりません。

手当や基本給の一部に割増賃金を含めること自体は、きちんと割増賃金が支払われてさえいれば、法的には問題ありません(関西ソニー販売事件 昭63.10.26 大阪地判)が、手当や基本給に含まれる割増賃金相当額と通常の労働時間に対する賃金とが明確に区別できなければなりません。(国際情報産業事件 平3.8.27 東京地裁)

つまり、就業規則等に、「〜手当に割増賃金が含まれている」と明確に分かるような記載をする必要があるという訳です。

就業規則に賞与月数が明記されている場合の賞与減額は?

Q: 就業規則で賞与の支払いについて、「基本給の〜ヵ月分」と記載しているのですが、減額したいと考えています。法律的な問題はあるのでしょうか?
A: 「就業規則の不利益変更」となりますので、一方的な減額は認められません。(「就業規則の不利益変更」とは?参照

賞与について、労働基準法を含め、明確に定めた法律はありません。従って、必ず支給しなければならない性質のものではないため、その支給要件や支給時期、計算方法、支給対象者、あるいは、その要件に応じて賞与を支給しない旨を定めることも可能です。

しかし、賞与という名称であったとしても就業規則等によりあらかじめ支給条件が明確にされたものは、これによって事業主に支払い義務が生じ、労働者に権利として保障されるようになるため、この賞与は労働基準法の定める「賃金」となります(昭22.9.13 発基17号)。つまり、賞与月数が明記されていることにより、支給条件が明確となり、その賞与は「賃金」として労働基準法により保護の対象となってしまう訳です。

このように賞与月数を定めた就業規則は非常にリスクが高いので、早急に就業規則の変更に向けて対応を始めるべきだと言えるでしょう。

「就業規則の不利益変更」とは?

Q: 「就業規則の不利益変更は、慎重に行うべきだ。」とよく聞きますが、どのように考えれば良いですか?
A: 「就業規則の不利益変更」は原則、認められませんが、その変更の必要性と合理性により認められる場合もあります。

この点について、労働基準法では何も定められておらず、就業規則による定年制の新設が争われた裁判例により、次のように示されています。

「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解するべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、その適用を拒否することは許されない。」(秋北バス事件 最高裁大 昭43.12.25判決)

この裁判例以降、数々の裁判が行われてきました。それらの結果をまとめると、不利益変更の判断要素は以下の8つとなります。

  1. 経過措置の有無・内容
  2. 変更によって労働者が被る不利益の程度・内容
  3. 使用者側の変更の必要性の内容・程度
  4. 変更後の就業規則の内容自体の相当性
  5. 代償措置その他関連する労働条件の改善状況
  6. 労働者等との交渉の経緯
  7. 他の労働組合又は他の労働者の対応
  8. 社会一般的状況からみた妥当性

「就業規則の不利益変更」は、1.〜8.の内容を踏まえた上で慎重に対応していかなければなりません。特に、経過措置や代償措置を取ることにより、従業員の理解を得ることが重要であることは言うまでもありません。

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